毒舌に惑わされて

ここは大倉くんの知り合いの店のようだ。大倉くんとのデートでは、毎回知り合いに会っている。

１回目はお父さん、２回目は大学時代の友だち、そして、この蕎麦屋のおじさん、おばさん。


「この人たちは、親父の友だちなんだ。子供の頃からよく連れてきてもらってきていて、大人になってからは１人で来たりしている。最近は忙しくて、来れなかったけど」


「そうよー。最近顔を見せてくれないと思ったら、突然彼女なんて連れて来るしねー。お嫁さん候補かしら？」


少しふっくらしたおばさんがお茶を置いて優しく笑う。


「まだ全然そんなんじゃないし、彼女でもないよ」


私が答えに困っていると、大倉くんがやんわり否定してくれた。


「あら、それは残念。祥ちゃんはいい子だから、旦那さんにお勧めよー」


「ハハッ…そうですか」


お勧めされても、これまた返事に困る。


「俺もお勧めだと思っているんだけどね」


「まあ祥ちゃん、相変わらず図々しいのね」