毒舌に惑わされて
2人の会話を笑いながら聞くけど、かなり困惑している。今、私の顔は多分引きつっている。

きっと大倉くんは私の返事を期待している。こうやって、知り合いに合わせることが大倉くんの策略かもしれない。

本当に早くはっきりさせないとこれからも大倉くんの大事な知り合いばかりに会わされて、いつの間にか付き合っていることになりかねない。

悠長に考えている場合ではないかも。


「美味しい!」


「でしょ? 莉乃ちゃんに食べさせたかったんだ」


爽やかな笑顔を見せる大倉くん。大倉くんの笑顔はやっぱり安心できるものがある。

聖也の笑顔は……意地悪な笑顔ばかり見ている気がする。

たまにしか見ることの出来ない優しい笑顔に私は振り回されている。

振り回されて…? 振り回されているわけではないかな…心を動かされているというか……。


「莉乃ちゃん、眉間に皺寄せて、どうしたの?」


「あ、ごめん!何でもないよ」


今考えるべきことじゃなかった。何で聖也が頭に浮かんできたのだか……。

迷惑な男だ。


「ごちそうさまでした」


蕎麦屋を出て、また車を走らせる。
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