毒舌に惑わされて
引っ張られないように私は足を踏ん張った。野村くんも慌てて、私のもう片方の腕を掴む。


「離して。これからこの楽しそうなジェットコースターに乗るんだから」


「ヤダね」


「何でよ。聖也も乗るんでしょ?」


「聖也くーん」と残されてた女の子が泣きそうな顔をしている。

置き去りにされそうだから、悲しくもなるだろう。こんなとこで女の子を泣かせないでよ。


「莉乃。今すぐ、俺かそいつか選べよ」


「えっ?」


突然言われた選択に「そいつ」と指差された野村くんと顔を見合わせる。


「何であんたにそんなことを言われなくちゃいけないわけ? 俺たちの邪魔しないでくれる?」


野村くんが強い口調で聖也に詰め寄る。

そうよ。何で邪魔するのよ。


「俺は莉乃に聞いているんだ。莉乃、早く決めろよ」


聖也は野村くんの問いかけを無視して、私に決断を急かす。

ただ遊園地デートを楽しんでいただけなのに、何でこんな険悪なムードの中にいるのだろう。
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