毒舌に惑わされて

「莉乃。早くしろ」


「あんた、いい加減にしろよ。勝手に間に入ってくるなよ」


「お前、どけよ。邪魔」


聖也はまたもや野村くんを無視して、私に顔を近付ける。

近い、近い！

聖也の顔が目の前まで迫ってきた。好みの顔が真っ正面に来て、私の心臓は早くなった。

何でこんな状況なのに、ドキドキしてるのよ。私の心臓のバカ。


「莉乃。決めないなら、ここでキスするぞ」


「えっ？」


聖也の顔がさらに迫ってきた。

ヤバイ。あんなうまいキスをされたら、正常に思考が働かなくなる。

心が持って行かれてしまう。


「だめ！」


私は触れられる前に両手で自分の口を押さえた。


「おい」


聖也がその手を離そうと掴んで引っ張る。


絶対に離すもんか…。離したら何されるか分からない。私は口から離れないように力を入れた。


「それは、どういうつもりなんだよ？」


怖い顔した聖也は苛ついていた。


もごもご…。


「は？言ってること何も聞こえねーよ」


あ、いけない。口を押さえているから、声が出てなかった。