毒舌に惑わされて
「今は野村くんと一緒にいるから。野村くんといたいの」


ちゃんと決断した。


「あっそ。覚えておけよ」


少々物騒な捨て台詞を吐いた聖也は列から完全に出て、ポケットに手を突っ込んだ状態で出口の方へと歩き出した。


「聖也くーん、待ってよー」


甘い声の女の子が追い掛けていった。

残された私と野村くんは、今のひと悶着で少し空いてしまっていた列を詰めた。


「安藤さん、もうすぐですよ。ワクワクしますね!乗っている間、両手あげます? どうします?俺、どうしようかなー」


野村くんは、何事もなかったかのようにはしゃぐ。


「あたし、両手あげようっと!その方がスリルあるし、楽しいもの」


「じゃ、俺もー」


私も聖也のことには触れないで、せっかくの遊園地デートを楽しむことにする。

嫌な気持ちをいつまでも引きずる必要はない。

さっきの嫌な出来事を忘れようとしているかのように私たちは絶叫した。

上昇した時の開放感、下降する時の爽快感は頭を真っ白にさせて、ただ楽しむことだけに集中出来た。


「気持ち良かったですね!」


「楽しかったね」


スッキリ、スッキリ!

気分爽快だ。
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