毒舌に惑わされて
「ただ、あまり大きな声は出さないでね。刺激されても葉月はもう起きないから、俺が困っちゃうからさ」


「そんなこと絶対にしないから!」


「まあ、聖也も男だから気をつけて。おやすみ」


右手をひらひらさせて、部屋から出て行った。気をつけてと言うならば、なぜこんな危険なとこに私を置いていくのよ?


「おい、莉乃? 何そんなとこで丸くなってんだよ」


私は部屋の隅っこで膝を抱えて座っていた。一応私なりの防御のポーズだ。


「き、気にしないで」


「まさか警戒してる? その年で男を怖がるなんて、意外にかわいいじゃん。でも、俺は興味のない女には手を出さないから、安心しろよ」


そう言って、くっついている布団を離した。その行動にホッとして、私は恐る恐る布団に入る。


「絶対に近寄らないでね」


「了解。おやすみ」


聖也が同じ部屋にいるという緊張からか、なかなか寝付けなかった。

けれど、気付くと朝になっていて、同じ部屋で寝ていた聖也は早々と家に帰ったらしく、既にいなかった。
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