毒舌に惑わされて
「莉乃ちゃん、それは一気に飲むものじゃないよ」


口をハンカチで押さえる私にマスターが呆れるけど、そんなのは気にしない。


「おかわり」


もう一杯要求する。


「はい、はい」


返事をするけど、今度はなかなか出てくる気配がなく、マスターはフラッとテーブル席のほうに行ってしまった。

忙しい時間だから仕方ないのかな。マスターの動きを確認してから、もう一度イケメンを見る。

あれ? 何だか視界がぼやける。マティーニがいけなかった?

一気に飲んだのがよくなかったのか、酔いが回ってきたような。

えっと、今夜は何杯飲んだっけ? 思い出せない……。


「おい、大丈夫か?バカな飲み方するから」


ん? イケメンが何か言ってるけど、よく聞こえない。


「何?」


私は聞こえる距離に行こうと立ち上がり、隣りに座ろうとした。

したのだけど、足がもつれてしまい……


「ワッ!」


「キャッ!」


「あぶねーな」


イケメンに抱きとめられた。少し顔を上げればかっこいいお顔がすぐそこ。

あー、悔しいほど好みのお顔だ。
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