毒舌に惑わされて
納得したようだが、聖也は握手をしてくれなかった。右手を出したままの私がアホみたいじゃないのよ…つくづく失礼なヤツ。


「あー、眠たい」

このまま気持ち良く眠りたいな。


「おい、寝るなよ。おい!」


聖也が何か言っていたけど、聞こえない……。


*****


「おい!いい加減に起きろ!」


頭上から冷たい言葉が降ってきて、目を開ける。

不機嫌な顔をした聖也がネクタイを締めながら、私を見下ろしていた。


「えっと、ここは?」


私は今置かれている状況を把握するために体を起こすして、キョロキョロと部屋を見回す。


「俺の部屋に決まっているだろ?」


何で聖也の部屋に決まっているのだか。


「なぜあたしはここに?」


「お前があそこで寝たから、連れてきてやった」


「そう。で、聖也は今からどこかに行くの?」


「結婚式。いいからお前、帰れよ。迷惑だから」


ネクタイを締め終えた聖也はスーツの上着を着る。やっぱりかっこいいな。見惚れてしまう。


「ほら!早く起きろ!俺が出れないだろ」
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