毒舌に惑わされて
ここにいなければいけない理由なんてない。早く家に帰って、寛ぎたい。


「もうこんな時間だし、泊まって行けばいい」


「でも、明日も仕事だし」


着替えがない。同じ服で出社するのは、はっきり言ってかなり困る。


「ここから行けば?そんなに距離は変わらないじゃないか」


「そう簡単に言わないで」


「こんな夜に1人で歩くのは危ないだろ?」


聖也は意外にも心配性?

それでも、明日のことを考えると家に帰りたい。それに、ここが安全なんて保障もない。聖也が危険な男だという可能性だって十分にある。


「タクシーで帰るよ。それなら心配ないでしょ?」


「じゃあ、タクシー呼んでやるよ」    


あら? 意外にも親切。

10分後にタクシーが来たが……


「ねえ…、何で聖也も乗ってるの? タクシーなんだから、わざわざ送ってくれなくてもいいよ」


なぜか聖也も一緒に乗り込んだ。それに、乗ってからの聖也は何も喋らない。


「ねえ?」


全く返事くらいしてくれないかしら。
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