時猫
「もういいでしょ?どこかに連れてって」
「ですが…」
「…何なの?何で、いつもこの事だけには否定するの?」
「ですから、お嬢様はこの如月財閥の跡取りなので…」
「あー、もう!その、“跡取り”って言葉は聞きたくない。」
深くため息をつく。
「じゃあ、こうして。今日1日だけでいい、どこでもいいから、どこか遠くに連れてってちょうだい」
「1日…。まあ、いいでしょう」
「お父様には内緒ね?あの人、私が外に出るとほんっとうるさいから」
一度、この生活が本当に嫌で、荷物も持たず外に出た事がある。
パトカーや救急車が何台も来て、家に帰ったら号泣したお父様に思いっ切り抱きつかれたっけ…。
「椿が見つかった祝いに!」
とか言ってやったときのパーティーはすごかった。
…まあ、それはいいとして。
「かしこましました。では、用意をしてきますね」
「うん、お願い」