時猫
お辞儀をし、くるりと踵を返した翔太の後ろ姿を見送る。
とりあえず…。
少しだけ、この生活から解放される。
本当はずっと解放されたいんだけど…。
でも、ほんのちょっとでも、了解してくれた翔太に感謝しないとね。
「お嬢様。用意が出来ました」
「早っ…。もう行けるの?」
「ええ。ですが、出発する前に、これに着替えて下さい」
そう言いながら翔太が取り出したのは、ピンク色で、桜の模様が付いた綺麗な着物。
「いい、けど…。でも何で?今のかっこうじゃ駄目なの?」
今私が着ているのは、紫色の大人っぽいドレスだった。
「そのままだと、あっちに着いた時に困ると思うので。」
「そう?分かった」
和服パティーとかやるのかな?
なんて呑気な事を考えながら、部屋の中にある小さな個室に入って着物に着替える。
私は、ドレスや着物を何度も着たことがあった。
だから、躊躇せずにパパパっと着替えられる。
それにどうせ行けるのなら、早めに行きたいし。