恋の賞味期限 愛の消費期限(Berry’s版)【完】
ただ待つということ

待つことの苦痛

仕事は益々忙しくなっていた。
それなのに彼は、週末だけは私の家に食事をするために仕事を早く切り上げていた。
そして、9時過ぎに2週に1度のペースで3時間かかる実家にそのまま帰っていた。

娘たちがお風呂に入っている間に、キッチンで片付けが済んだので、コーヒーを入れる。
それを両手に持ってリビングに行くと、彼はいつの間にかソファーで居眠りをしていた。

「あっ。ごめん」

私の気配に気づいたのか、彼は眠そうな目をこすって開けようとする。
隣に座って、テーブルに2個のマグを下ろして、彼のおでこに手を当てる。

「あぁ~。ひな、気持ちいい」

彼は再び目を閉じ、ソファーにもたれた。
私の手に彼の手が重なる。私がびくっとして手を抜こうとすると

「そのまま。もう少しだけぇ…」

そう言いながら、語尾はうつろで、彼の手はゆっくりと…
力が抜けて行った。また寝てる。

私はおでこから、頭へ手のひらを動かし、何度も繰り返し髪を撫でた。

なんでこんなに頑張るんだろう。
なんでこんなに真面目なんだろう。
この人をいとおしいと思っている自分にはっとした。
私にもまだ、こんな感情が残っているんだ。

優しい気持ちが胸を満たし、私はそのまま私の眠り王子の髪を静かに撫で続けていた。
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