恋の賞味期限 愛の消費期限(Berry’s版)【完】
密室のエレベーターは、こんな遅い時間に誰も乗る人はおらず、

いつも私一人だった。

夜遅くてさめざめとした空間でカードキーを握り締め、

突っ立ったままその綺麗な景色を眺める。

ふわっとする気持ち悪い感覚。

何度乗っても慣れることはない…

それはこれから起こることについても同じだったが…

私は非現実的な世界に、これから迷い込んで溶けていく。


瞳は景色を映していても…

心には別のものが渦巻く。


私は元旦那と別れる前から、あの人の事が好きだった。

なぜかと言われたら今でもよくわからない。

あの人が転勤してきたときからずっと気になっていた。


ただ…

私たち夫婦の離婚の原因はそういった類の不倫ではない。

私は離婚するまで、ただ、あの人を眺めていただけなのだから…


元旦那は私たち母娘にたびたび暴力をふるっていた。

いつもは優かった彼が何かの言葉や行動をきっかけに別人になっていった。

付き合っていた頃や、結婚した当初はもちろんそんなことはなかった。

それは彼が、結婚当初の職を突然辞め、転職してからのことで、

その頃から家族の歯車が徐々に、徐々におかしくなり始めた。
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