恋愛音痴と草食







 新年早々顧客に挨拶にまわるとやはりどこでも年末前に離婚したことが話題になっていた。気の毒に なんて心にもないこと言われ続けてさすがにいちいち応対するのに疲れた頃佐倉さんがいる会社に回った。

 経営陣と会談中にうっかり今度はもっとよく話ができる相手がいいですねともらすと向こうは大きくウンウン頷いた。聞けば単身赴任時代に話ができる相手がいるありがたみが身に染みてわかったという。

 その言葉がトゲのように胸に刺さった。

【何かあった時に当たり前のように話が出来る相手】…それが自分が求めるべき人間だったのだ。前の妻とはくだらない会話さえしたかどうか曖昧だった。

 誰もいない家は静かだ。誰にも邪魔されない。だが、時折苦い思いが胸を去来する。その正体を自分はどこかで勘づいていた。 

 この会社にいるからだろうか、佐倉さんと話がしたくなった。手頃なというか体よく言えばダシとなる案件もあるにはあった。

 継続案件に関して確認したいと、少しだけ中座して彼女の所属部署に向かった。

 彼女はまさに自分について話題にしていた。
いいタイミング過ぎておかしくなる。

げ と振り返る彼女の顔を吹き出しそうになりながら見た。



やっぱり この子 は オモシロイ

久しぶりに自分から動いてみよう そう思った。

 何ごとも働きかけて反応レスポンスが生まれる。何もしなければ何も変わらないだけだ。

たぶん、それだとつまらない


だからやってみる価値はある。

 
『明けましておめでとう』

……新年早々 自分は新しいナニかを見つけ出したような気がした。


そう。そして よろしくお願いしますね、佐倉さん。
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