恋愛音痴と草食




『昨日佐倉さんがあの小田桐さんとデートしていた』

 その話を昼休みの休憩室で聞いた時真っ先にあり得ないと思った。

佐倉さんに似た別人だと思った。なのに、

 遅れて休憩室に来た佐倉さん本人は別のフロアの女性に直撃インタビューされ 顔を思いっきりしかめ ゲ と言ったあとあっさり夕食おごってもらって帰っただけだと認めた。

なんでそんなことに…。なにくわぬ顔で耳を立てて次の彼女の言葉を待つ。

『退勤後おかず買おうとしたら駅ビルでバッタリ出くわしてさ。私があんまりお腹空いてそうな感じに見えたのかなぁ』

……佐倉さんが鈍い人なのはよくわかってる。ツッコミどころ満載だ。

『えー、でも小田桐さんとふたりっきりでなんて羨ましいぃ』
あの小田桐顧問とだったらそうだろう。

『んー、でも実際イケメンとふたりっきりで食事なんて緊張し過ぎて食事どころじゃなかったよ』

え…。

結子とその女性の会話を聞いている博之は不快感にも似たざわつきを感じた。

恐れていた事態がついに来たんだと直感した。


頑張って 手を打たないと誰かにとられる。


あらためて博之はその可能性を目の当たりにしていた。

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