恋愛音痴と草食
「ひろちゃん。いつもごめんね」
ウトウトしかけたあたりでそんな言葉がかけられた。なんで謝られるのか分からず結子の手にまぶたをふさがれたままの状態で どうしたんですか?と たずねた。

「あたし、ついキミに頼っちゃって…」
 あぁ、なるほどと博之は納得した。珍しく加賀見が酔いつぶれたのは結子が仕事を加賀見に振り過ぎたせいの過労だからだと思ってるようだ。

「…気にしないで下さい」

「でも、やっぱり悪かったよ…」
 結子の後悔がその手のひらから博之に伝わった。博之は結子の手首をつかみ、そっと外して眩しそうに見上げながら結子にきっぱり言った。

「俺が好きでやってるんです」

「………え」

 結子がびっくりしたようにこっちを見ている。

 博之は言ったすぐ後にそのセリフがどうとでもとれることに気づいたが、どっちでも構わなかったからそのまま補足するようなことは言わなかった。

…できたら加賀見の結子への恋心に気づいてくれたらラッキーかなとは思うが、結子が好きなようにとってくれて構わない。

 やっぱりそれなりに酒に酔っているのか、夜中にこうして2人いるというシチュエーションに酔ったのかもしれないと頭のどこかが冷静に分析する。

「キミもたいがいお人好しだね」

 結子の返答に加賀見は内心ガックリくる。やっぱりこの人は恋愛センサー作動してくれない。十分恋愛音痴だ。

「…俺そんなにお人好しって訳でもないですよ。人選んでますよ」

「あれ?私あんまり断られてないような気がする。あー、そっか。ごめんね。あたし先輩だからそら断りづらいよねぇ」

……なんでそうなる。さすがの加賀見も呆れてくる。

「確かに俺はあなたに逆らえないですけど」

「す、すいませ…」
結子が最後まで言う前に加賀見がさえぎった。

「でも、たぶん特別なんです」

「ぇ……」

 結子が固まったように加賀見を見る。加賀見はそんな結子の目をじっと見つめた。

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