桜色ノ恋謌
「……咲絢の涙は、誰のために流してるの?」


鳥羽さんが優しく私に尋ねる。


理由なんて言えるわけない。


私の気持ちがまだ、鳥羽さんにあるからだということは。



質問には答えず、黙って首を横に振った。



「……泣くなよ。それとも、まだ、期待……してもいいのかな……?」


その質問には激しく否定の意思を示した。



だって私は恭哉を裏切れない。


恭哉の強い気持ちには、応えなければいけない。


鳥羽さんと間違いを起こすのはダメだから。



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