呪島~ノロイジマ~
不安に襲われた。


これはいったい……。



前に聞いたことがある話を思い出した。


友達の親戚のお兄さんが、プロレスごっごをしていて脊椎を損傷し、

首より下がまったく動かなくなったという話を……。



首の向きが変わらないから、美絵に分かるのは視界の中にある状況だけである。


血を流し目を見開いて見つめる敦也の顔。


それ以外は何も分からないのだ。



動かないだけでなく感覚もないから、もしかしたら自分の手や足も、あらぬ方向に向いて折れ曲がっているのかもしれない。


美絵はそんなことを考えてゾッとした。



このままここにいて、誰かが助けてくれるのだろうか?


朝になって……


帰らぬ娘を両親が捜してくれるだろうが、早紀の家まで捜しにくるとは考えにくい。


不安が美絵を襲う。


この家の人は誰もいない。もしかしたらずっとこのまま、誰にも見つけてもらえず、餓死するのを待つだけかもしれないのだ。


涙がこぼれる……。







「遊ぼ」


突然耳元で女の声がした……。

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