遠い君へ。
体育館に移動して、校長の話が始まった。
クラスごと適当な順番に男女一列ずつ並んでいる。
「あずきつまんないね」
【ね~。長い。飽きた】
「ほんと嬉しいわ。あずきとこんなに同じクラスになれるなんて」
【ほんとね!同じく】
あずきとは、幼稚園から中2まで10年間同じクラスだった。
だからこれで、11年目。
「今年こそ評定負けないからね」
耳元でささやくと、あずきは軽く睨んできた。
【うちが咲に負けると思う?】
「思う」
【思わない】
「思う」
校歌斉唱が始まり、真面目に歌うあたしと、ひたすらぼーっとするあずき。
似た者同士なようで正反対なあたし達は、今まで喧嘩をしたことがない。
たとえ、喧嘩をしたとしても縁は切れない自信がある。
だってお互いをよく知ってるし、何より信頼関係があるから。
あずきがいなかったら、あたしはもっと静かで友達も少なくて陰キャラだったかも知れない。
だから感謝してるんだ。

体育館から戻った教室で、女子たちは携帯を出して盛り上がり始めた。
彩子ちゃんが中心にいる。
モデルの子と連絡交換できるなんてすごいことだよね。
「携帯♪携帯♪」
席に取りに行こうとすると、例のかっこいい人が座っている。
「ちょっといいですか?すみませーん」
邪魔だな・・・。よけてよ・・・。
「あれ?どこだっけ」
【何探してんの?】
「あー…携帯です」
【制服見てみた?】
制服?
ポケットに手を入れたら・・・あった。
しゃがんでバッグの中探してたのに!
ひゃ~。恥ずかしい~…。
「ありがとう…」
【ちょっと天然?】
「いや…!違う!」
女子の集団に走って行ったら、みんなあんなに盛り上がっていたのに、もう交換が終わったらしく散っている。
後ろを見るとさっきの男子が笑っていた。
こんなに虚しいところも見られた・・・。
恥ずかしすぎる。
【咲ちゃん!交換しよー!】
「え!あ!うん!!」
彩子ちゃん…!さすがです…!
その後も何人かが寄ってきてくれた。
【かわいいねー!アイドルみたいな顔!】
「えっ!?あたし!?」
彩子ちゃんはあたしの顔をまじまじと見てくる。
こんなに整っている美人に見つめられるとすごく照れる。
こんなの反則だよ!!
彩子ちゃんの彼氏になった人はいちいちこんな思いするの?
「無理・・・もたない・・・」
【え?何が?】
あたしは1歩。2歩。下がった。
「彩子ちゃん美人すぎるから・・・」
【えぇ??】
「見つめられると恥ずかしくない?」
あずきに聞くと、別に恥ずかしくないらしい。
【咲ちゃんって超おもしろいね!】
「でも、彼氏できたらこういう反応されるでしょ?」
【別にされないよ!てか何でこんな純粋な子が、あずきと親友なの?】
【うるさいわ!うちだって純粋だからね!】
【はい?あんたが?】
【何?そうだけど?】
【何で怒ってんの?短気短気~!】
【怒ってないもん。勘違い激しい~!】
何だこの二人は!!
こんなに二人って仲良かったんだ。
微笑ましいけど…なんか寂しいなぁ。







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