Sympathy For The Angel
そうすれば、ルカが不安定な気持ちを抱えて苦しまなくても済むように、フォローはしてあげられる。


「今も昔も、アイツに対しての気持ちは変わってません。……その気持ちは、絶対にブレないです」


シズは、私の顔をしっかりと見据えてその言葉を言い切った。


「……分かった。明日にでも、ルカに話してみる。シズもルカと話し合いたいんだよね?」

「勿論です」

「シズもさ、ルカからの着信にはちゃんと出てあげな?ルカ泣いてたよ。メールも電話も無視された…ってね」

「すみません……」

「だーから、謝る相手が違うでしょ。今日店が終わったら必ず連絡してやってよ?」


シズは神妙に頷いて席を立った。

立ったまま、私に向かって頭を下げる。

「椿さん。アイツの事、宜しくお願いします」


立ち去るシズの後ろ姿を、複雑な思いで見送った。


「……抜けられなかったんだよ、シズはその時」

樹が申し訳なさげに呟いた。

「出来る限りの事はしてやるよ。樹だってシズに紅蓮を抜けられたら困るんでしょ?」

「……ああ」

樹も浮かない顔で後ろのテーブルを見た。

ホストの男の子達は皆、笑ってはいるけど、中にはシズのように苦しんでいるコもいるんだろうな。

それは『蘭』のメンバーだって同じ。



「分かってやってくれよ、アイツらの事。お前がフォローしてくれないと、俺ら皆がガタガタになるから」

だったら最初から私にだけでも説明しろってば。


「分かったよ。エリカに相談しながら、蘭の不安要素を取り除くように努力する。けど、樹もちゃんと、今度からは説明してよね?」

「ああ」

短く返事をして、樹は席を立った。


「ヒロを呼んだ。アイツに送らせるから」

手を絡めて入り口まで歩きながら、樹はそう言った。




「ったく、俺はパシリじゃねっつーの」

不機嫌さを隠そうともしないヒロを入り口でみつけて苦笑いをした。

「だって俺、酒飲んでるから。単車転がせねぇ。悪いけど、椿を頼む」

嘯く樹を、ヒロが恨めしげに睨む。


ごめん、ヒロ。

今は夜中の1時半だね、ドンマイ。




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