Sympathy For The Angel
翌朝、空腹神経を刺激するような良い匂いに釣られて目が覚めた。

味噌汁と焼き魚みたいだ。

寝巻き替わりのスウェットのままキッチンに降りると、制服姿の美優紀が甲斐甲斐しく朝食の準備に追われている。


「おはよ」

寝癖頭で美優紀に挨拶したら、不意をつかれた美優紀が驚いた顔でこっちを振り向き、皿を落っことしそうになっていた。


「おはようございます。起こしちゃってすみません。あと、ご飯の材料を勝手に使っちゃいましたけど………」

「いや、いいよ。それより昨日はよく眠れた?」


初日だし多分あんまり寝れてないんだろうな、と思いつつも美優紀に尋ねる。

「緊張して、なかなか……」

美優紀はへへ、と笑って頭を傾げた。


「兄から手術代の事を聞きました。昨日せっかく樹さんが来たのに碌にご挨拶も出来ないで二重に申し訳なくて……。それを考えて悶々としていたら、いつの間にか朝でした」

「いいよ、気にしないで」


美優紀が差し出した炊きたての白米が鼻腔を擽る。美味しそう!


「食べよっか」

頂きますと二人で手を合わせて黙々と箸を進める。


「すごく美味しいよ。美優紀は施設では料理とかやってたの?」

「賄いのお手伝いはしょっちゅうやってました。でも料理より手先を使う仕事の方が好きなんですよ、ミシンがけとか編み物とか」

遠慮がちに卵焼きに箸を延ばす美優紀に皿を勧めてやった。




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