椿山亜季人の苦難日記
授業開始まで、あと5分。

だらだら歩いても間に合う。たぶん。


途中、職員室の廊下に見覚えのある姿があった。


「ん、日和ちゃんか。」



日和ちゃんと、そのクラスの副担任の吉村。

…いや、吉田?



「あっ、ありがとうございました!吉原先生…。」



正解は、吉原でしたー!



「いや、いいよ。頑張れよ、田崎。」


吉原は、ぽんっと、日和ちゃんの頭を軽くなで、職員室へ戻った。

日和ちゃんは、その背中を見送ると、真っ赤な顔で下を向く。


…あー、分かっててやってるんだな、あの男は。



つまりは、そういうことらしいよ。



これが日和ちゃんの気持ち。




そして、



ひとつの事件の、



ほんの序章…―



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