椿山亜季人の苦難日記

突然声をかけられたので、驚いてそちらを向くと、同じ目の高さに亮介くんの顔があった。


「驚きすぎでしょっ!」


私の反応に、お腹を抱えて子供っぽく笑っている。


「もう…、そりゃ驚くでしょう。」


ちょっとすねて言うと、謝りながら、笑うのを止めた。


「いや…、嬉しそうだね?日和ちゃん。」


代わりに、急に落ち着いた優しい顔をした。

それはどこか寂しくて、大人びていた。


「…亮介くん?」


「な~に?」

彼の顔は、すぐにまた子供っぽく明るくなっていた。


「ううん、なんでもない。」

それは深入りを許さないところがあって、それ以上は訊けなかった。
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