椿山亜季人の苦難日記
「…そんな顔するな。」


先生の温かい手が、頬を撫でた。


唇が触れるか触れないかくらいの距離で、低い声で囁いた。


「…しばらく触れないから、今日は特別…。」


重ねた唇の温かさも、抱き締める腕の力も、抱きかえす背中の広さも、


しばらく触れないなら、全部覚えておこう。


ずっと一緒にいるために、

卒業まで、ほんの少しだから…










『何やってるの!!?』




一緒にいるため…。





何度も、何度も、



あの瞬間が繰り返される。



幸せが、絶望へと変わった、あの真っ白なシーン。


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