椿山亜季人の苦難日記
「日和さんも、彼も、年齢にしてはしっかりしています。ただ二人の男女が、愛したい相手を選び、自然に恋に落ちただけでしょう。」
「そんなことっ…!」
母が何か言おうとして、言葉につまって下を向く。
「高校生にもなれば、誰かしら恋をする相手を見つけます。付き合って、学生生活に支障をきたしたわけでもありません。」
さっきよりも、少し落ち着いた様子の父と目が合った。
眉尻を下げて、優しげで、悲しげな目をしていた。
「そんな相手と付き合ったからといって、怒らないでしょう?」
「…ええ。」
低く響く父の声。
「教師と生徒、という関係については、学校側で処分しました。どうか、そのことで日和さんを責めないでください。」