君がいた夏




学校が始まって一週間くらいたつと、思いとは裏腹に図書館に行くことは出来なくなった。




また、忙しい毎日が始まっていくうちに、陽平と過ごしたあの時間は、夏の間の夢だったような気もしたりして。




……だって、写真とかもないし、連絡先も知らないし、何かをもらったわけでもないし。




陽平が確かにいたんだという印がどこにもなかったからこそ……陽平を思い出して、苦しくなった。





──私は一体、陽平の何だったんだろう……?





あの花火大会の日の言葉──『好きだよ』と言ってくれた、あの言葉はなんだったのだろう?





それでも……いくら印がなくても、私の記憶の至る部分に陽平が染み付いていて。




例えば普通に授業を受けていても、誰かと会話していても、ふとしたきっかけから陽平を思い出してしまって。





──陽平と過ごした時間が長すぎたから、その思い出が大きすぎたから、どんなものを見ても、陽平へと繋がってしまうんだ。


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