君がいた夏
“……はは、まさか。もう忘れてるよ。随分懐かしい話引っ張り出してくるね?どんだけたったと思ってんの”
先ほど麻奈に言った言葉を思い出す。
……ほんと、馬鹿みたい。
忘れてるはず、ないじゃない。
忘れられるはず、ないじゃない……。
今だってこうして、その面影を探して、必死に縋り付こうとしてるのに。
「……うぅ……」
情けない嗚咽が、喉の奥から漏れる。
「陽平っ……」
もう、立っているのも限界だった。
その場に蹲って、足元に小さな影を落とす。
ぽろぽろと溢れ出す涙が、乾いたアスファルトに影とは別の染みをつくっていた。
* * *
私とその人……山内陽平が出逢ったのは、一年前、高校1年生の一学期の最後の日だった。
終業式を終え、明日から夏休み、という気分でいた私。
ちょうどその日は地元の商店街でお祭りが行われる日で、私も制服で一人だったけど、なんとなくふらっと立ち寄ってしまったんだ。