どこからどこまで
「つらたん…」
「つらたん…」
「…なにそれ」
「"ツラいので単位ください"の略~」
「……なるほど」
現在、日曜日の夜。明日はドイツ語のテスト。
かくかくしかじかで、あたしは翔ちゃんの部屋で勉強をしている。
いつも通りに翔ちゃんがつくってくれた夕食を翔ちゃんの部屋でとり、たわいない話をしたあと、いつも通りに自分の部屋に戻ってシャワーを浴びたわけなのだが、残念ながら明日はテストだ。勉強をしなくてはならない。
しなきゃしなきゃと思いつつも、なかなか手がつけられず、時計を見れば日付が変わろうとしていた。
『ドイツ語…やる気が起きない……。さようなら、単位。こんにちは、再履修…』
あまりのやる気のなさに、しまいにはツイッターをひらいてしまい、そんなことをつぶやきもしたのだ。
『明日テストだけど何も勉強してない #クズ』などというツイートでタイムラインが埋まっていた。クズハッシュタグの大活躍だ。
そんなあたしのクズなツイートにリプライがきた。
『こっちに来て勉強すれば?教えられるかもしれないし。科目にもよるけど』
翔ちゃんからのそんなリプライを見たあたしはリプライを返さずにドイツ語のテキストと辞書、筆記用具を手近にあったトートバッグに突っ込んで、すぐさまお隣さんのインターホンを押していた。
ちなみに翔ちゃんのツイッターアカウントにも、あたしと同じく鍵がついている。
"想像以上に早かった"と言いながらドアを開けてくれた翔ちゃんは、心底おかしそうに笑っていた。
だって、このままひとりでいたら、たぶんこのまま寝ちゃって、本気でなんにもしてない状態でドイツ語のテストに挑むことになりそうだったんだもん…!