どこからどこまで
「うーん…じゃあとりあえず冠詞を完璧に覚えようかなあ……」
テキストを開きながらルーズリーフをバッグから引っ張り出す。
翔ちゃんはレポートの印刷が終わったのか、プリンターの電源を切っていった。パソコンがシャットダウンするときの音が聞こえてくる頃には、翔ちゃんの顔にメガネはなかった。
もうちょっと見てたかったなあ、メガネな翔ちゃん…。
別にフェチ的なものではないはずなのだが、なぜか後ろ髪を引かれるものがある。
「…なに?」
無意識に顔をジッと見てしまっていたらしい。不思議そうな顔をした翔ちゃんから慌ててテキストに目を落とす。
不定冠詞をルーズリーフの上で反復しながら話題を探した。
「………翔ちゃんの周りで、単位落としちゃった人とか、いた…?」
我ながら、なかなか失礼な質問だ。
「んー…俺と同じ国語科の奴は俺以外に5人いたけど……全員落としてたな、そういえば」
「へぇ~、そうなんだ~………えっ!?」
あまりにサラッと言うものだから、そのまま流しそうになった。が、とんでもないことを言われたような気がする。
翔ちゃんは少しだけ意地悪そうな顔をして笑いながら台所へと消えていった。
「ねぇ、翔ちゃん…!冗談だよね!?」
「ほんとだよ」
「うそだよ~…じゃああたしも落としちゃうよ~……」
「大丈夫でしょ、さなは。なんか飲む?アイスの方がいい?」
「だいじょばないでしょー…………アイス食べたいー」
クスクス笑いが聞こえたあと、冷凍庫の閉まる音。
なんだか、からかって遊ばれている気がするのは気のせいなんだろうか。
「…翔ちゃんは?」
「ん?俺はいいよ、さっき食べたし」
「いや、アイスの話じゃなくて単位のぅわああー!メロンシャーベット!懐かし~!」
「…落とさなかったよ?」
"予想通りのリアクション"と笑いをこらえるように言いながら、翔ちゃんはテキストの邪魔にならないようにアイスを置いてくれた。アイスというより、まあ、シャーベットなのだが。しかしそれは、ただのシャーベットではない。
メロンの形をしていて、パステルな黄緑色の容器に入った、メロンシャーベット。
テキストを開きながらルーズリーフをバッグから引っ張り出す。
翔ちゃんはレポートの印刷が終わったのか、プリンターの電源を切っていった。パソコンがシャットダウンするときの音が聞こえてくる頃には、翔ちゃんの顔にメガネはなかった。
もうちょっと見てたかったなあ、メガネな翔ちゃん…。
別にフェチ的なものではないはずなのだが、なぜか後ろ髪を引かれるものがある。
「…なに?」
無意識に顔をジッと見てしまっていたらしい。不思議そうな顔をした翔ちゃんから慌ててテキストに目を落とす。
不定冠詞をルーズリーフの上で反復しながら話題を探した。
「………翔ちゃんの周りで、単位落としちゃった人とか、いた…?」
我ながら、なかなか失礼な質問だ。
「んー…俺と同じ国語科の奴は俺以外に5人いたけど……全員落としてたな、そういえば」
「へぇ~、そうなんだ~………えっ!?」
あまりにサラッと言うものだから、そのまま流しそうになった。が、とんでもないことを言われたような気がする。
翔ちゃんは少しだけ意地悪そうな顔をして笑いながら台所へと消えていった。
「ねぇ、翔ちゃん…!冗談だよね!?」
「ほんとだよ」
「うそだよ~…じゃああたしも落としちゃうよ~……」
「大丈夫でしょ、さなは。なんか飲む?アイスの方がいい?」
「だいじょばないでしょー…………アイス食べたいー」
クスクス笑いが聞こえたあと、冷凍庫の閉まる音。
なんだか、からかって遊ばれている気がするのは気のせいなんだろうか。
「…翔ちゃんは?」
「ん?俺はいいよ、さっき食べたし」
「いや、アイスの話じゃなくて単位のぅわああー!メロンシャーベット!懐かし~!」
「…落とさなかったよ?」
"予想通りのリアクション"と笑いをこらえるように言いながら、翔ちゃんはテキストの邪魔にならないようにアイスを置いてくれた。アイスというより、まあ、シャーベットなのだが。しかしそれは、ただのシャーベットではない。
メロンの形をしていて、パステルな黄緑色の容器に入った、メロンシャーベット。