Don't forget “my memory…”
胸までの長い髪、幼さの残る綺麗な顔…
彼女こそ、彼がひたすらに心配し、呼んでいた人物だ。
彼女は、寝起きなのか、目をゴシゴシと擦りながら、部屋から出てきた。
「カリン…」
「ルイ…おはよ…」
彼が部屋の前にいる事に、微かに驚きながらも、欠伸をしながら挨拶をする。
そんな彼女の姿を見た彼は、彼女の肩に手を置くと、無事かどうか確認する。
「大丈夫か?カリン?」
「?何が?」
心配そうな瞳で彼女の瞳をのぞき込むと、彼女は首を傾げた。
首を傾げると共に揺れた長い髪が、サラサラと舞う。
小首を傾げる、目の前の可愛らしい彼女を見ると、先程まで感じていた、嫌な感じも消えてしまう…
ふと我に返ったルイは、目の前に彼女の顔がある事に少し戸惑いながら、身を放す。
そんな彼の頬は微かに赤く染まっていた…
「?どうかした?」
何故か目を反らした彼に疑問を持ちながら、彼にヒョコッと一歩近づくと、彼は更に顔を反らし、後ろを向いてしまった。
そんなルイの行動に、再び小首を傾げながらも、カリンは彼の背を押して歩きだした。
「さぁ、戻ろ、ね?」
「あ、あぁ…」
ニコニコ笑うカリン。
そんな彼女を見て、安心したように笑うシュウ。
彼は知らなかった…
彼の後ろで背を押す彼女が、怪しく口の端をつり上げていた事に…
別人のように、何かを企むように、笑っていた事に…
彼は気づいていなかった…
これから起こる、最悪の事態に…
思い出したくもない、忌まわしい過去…
涙を流し、傷つく姿…
二度と見たくない、あの出来事が、再び訪れるなんて…
知る術も…
気づく事も…
なかった…