Don't forget “my memory…”

リビングの中を行ったり来たりするルイ。

それを、椅子に座り、珈琲を両手で持ったまま、目で追うカリン。

彼女は、忙しそうに歩き回るルイを見て、微笑んでいた。


ルイは、出掛ける用意を忘れていたらしく、時間内に何とか済ませようと慌てていたのだ。



 「じゃぁ、出掛けてくる。」

 「うん。」


暫くすると、準備が整ったらしく、玄関の前まで歩くと、片手を挙げ、カリンに挨拶する。

するとカリンは、ニッコリと微笑み、手を振った。


可愛らしい彼女の見送りを受け、はにかみながら微笑む。



 「おとなしく、してるんだぞ?」

 「子供じゃないもん!」


ルイの言葉にぷくっと頬を膨らませるカリン。

そんな彼女を見て、声を上げて笑うのだった。




外に出ようと、扉へと手を伸ばすが…

何かを思い出したかのように、動きを止め自室へと戻っていく…



何か忘れたのだろうかと、彼が戻ってくるのを待つと、すぐさま彼は部屋から出てきた。




その彼が手にしていた物…

それは、大きな、大剣…


その剣を見た瞬間、彼女は、微かに顔を歪めたように見えた。



だが、彼女は何もなかったかのように、手を振って彼を見送る。


満面の笑顔で…

いつもの、天使のようなその笑顔で…


そんな彼女に手を振り、出掛けて行ったルイ…






 「チッ…」

扉が閉まり、彼の姿が部屋から消えると、彼女しかいないはずの部屋に、舌打ちをしたような音が響く…



 「やっかいな物持って行きやがって……」



部屋に響く声…

彼女が発するはずのない言葉…


だがその言葉は、紛れもなく、彼女の口から発せられていた…


手を口元に持って行き、爪を噛む彼女…


まるで、人が変わったかのようなその姿…


優しい雰囲気も、可愛らしい笑顔もどこにもない、別人のような彼女…



いつも笑っているその瞳は、緑色に光り、鋭く、冷たかった…


< 12 / 29 >

この作品をシェア

pagetop