Don't forget “my memory…”
身を低く伏せ、人間とは思えないスピードで迫って来る何者か…
風を切り、目にも留まらぬ早さで確実に接近する…
ルイの姿を確認すると、口の端をつり上げ、後ろに伸ばした手を広げると、鋭く、刃物のように爪を伸ばした…
いつもなら、いくら離れていたって、遠くにいたって、敵の存在に気づくルイだが、頭の中がグチャグチャな今、彼は背後の異変に気づいていなかった…
何事もないかのように歩を進め、背後から迫る足音など、耳に入らない…
獲物を仕留めるように、迫ってくる何者かは、太陽の光に、鋭利な爪を輝かせながら、タンッと地を蹴った…
高く宙に舞ったその人物は、高々と腕を振り上げ、獲物に狙いを定める…
地を見つめていたルイは、地に映る自らの陰の背後に、何やら動きを感じ、振り返ろうとするが…
既に遅く、自らの頭上から攻撃を仕掛けようとしている人物は、彼を切りつけてくる…
その攻撃を何とか交わそうと、横に飛ぶが…
「クッ……」
緑の草花の葉に、赤い雫が降り立った…
右肩に滲む、赤いシミ…
何かに引っかかれたような、3つの傷…
傷口を押さえる左手は、ペンキを塗ったかのように、赤く染まる…
彼は、とっさに攻撃を交わしたが、その攻撃は、あまりにも早く、完全には避けきる事は出来なかったのだ…
「あぁあー……避けられたかぁ……」
膝上のスカートをはためかせながら、軽やかに着地した人物…
「2年程、暗闇に閉じこめられてたからねぇ……なまっちゃったのかな……ま、しょうがないか……」
ルイに攻撃を仕掛けた人物は、1人で何か呟くと、遠くに立つルイを睨み付けた…
1つの風が、ルイの綺麗な顔を撫でて行った…
人間とは思えない力…
人間放れした素早さ…
悪魔…か…
荒れる息を整えながら、剣の柄へと手を伸ばす…
だが…
その手は、柄に触れる前に、ピタリと止まっていた…
見開かれた青い瞳…
何かを言おうと開く唇…
彼の青い瞳に、何が映ったというのだろうか…