恋愛ターミナル
「タクシー捕まえよう。送っていくから」
「や、そんな、いいですいいです」
「自宅が知られたくないとかなら遠慮するしかないけど、大丈夫なら心配だから送らせて」
私が両手を振ってやんわりと断ると、真摯な瞳で晃平さんが言う。
別に、私の居住場所を知られても一向に構わない。けど、そうしてしまったら晃平さんの寝る時間がさらに無くなるってことになるし……。
「こんな時間だし、タクシーが絶対安全って保証もないから」
食い下がる晃平さんに、下心は感じられない。
って、私の偏見なのかもしれないけど。晃平さんには優しくされすぎて、晃平信者になってしまいそう。
「……でも、時間が」
「亜美ちゃんになんかあったら、オレずっと後悔するから」
「……わかりました。本当すみません」
ガバッと深々と頭を下げ、お礼を言う。
すると、お酒を飲んでて、さらに頭に血が上ったせいか、軽いめまいを起こしてしまった。
「えっ。大丈夫?!」
「す、すみません……立ちくらみみたいなモンです……」
晃平さんに体を支えられながら「大丈夫です」と言っても説得力の無い私。
そのまま手を添えられて、近くのタクシーに乗り込んだ。
運転手に行き先を告げ、ふかふかのシートに背を預けると、幾分か具合はよくなってきた。
窓の外を眺め、ぽつりぽつりと光る街灯を見て、スポットライトを思い出す。