恋愛ターミナル

「ゆうと! これでいいのか?!」
「そうそうー。あとハンカチとぉ、おべんとう!!」


思わず、扉の向こうの光景が目に浮かんで、「ふっ」と笑いを零すと、表情を引き締めてからインターホンを鳴らした。

「はいっ」と勢いよく玄関を開けてくれたのはゆうとくん。


「おはようー……」


うわ! ひ、ひどい!


「おはようございますっ」


ゆうとくんの挨拶はとっても優秀で可愛くて言うことないんだけど!

ひどいのはあっち!!


「あ、おはよーっす」
「お、おはようございます……」


なぜか気持ち、フランクな感じの挨拶をして登場した父。
ゆうとくんとどこか似ているような爽やかな笑顔なのは素敵なんだけど……。


「ん? ――あ!!」


私の注意を引いたものに気がついた彼は、漫画のように慌てふためいていた。

その様子を見てたら、なんか……面白くて。
目の前にある光景でのマイナスポイントを、見事カバーしてくれた。


「こっこれはっ!! い、いつもこーいうワケじゃあ――」
「そー。さっきこうなったのー」


片手に菜箸を持って、まるで演劇のような大きな身振りで切りだすお父さん。
『いつもは違う』と主張しようとしているのは、どうやらゆうとくんの言うことを聞けば本当っぽい。


「それにしても……派手にやらかしてますね」
「はは……は……」


お父さんは頭を掻きながら、乾いた笑いを漏らす。



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