恋愛ターミナル
「もうっ。そんな迷ってる時間あったら、朝ご飯とお弁当、作ってあげてください!」
「はいっ」
反射で返事を返したお父さんは、急いでまたキッチンへと戻って行った。
「はー」とひとつ息をついて、改めてゆうとくんに両手を出した。
「すぐ、持ってくるから。ゆうとくんの幼稚園の時間は何時?」
「えと、8じにおうちでるよ」
「8時ね。それまでにまたくるから、ちゃんとご飯食べて待ってるんだよ」
「は―い!」
一生無縁のはずだった、小さなエプロンと可愛らしいハンカチを手に、階段を昇る。
――私って、こんなに世話好きだったかな。
亜美とか凛々とかはよく頼って来てる気はするけど。でも彼氏とかには、世話なんてなにもしなかった気がするし、しようとも思わなかったな。
ああ、そりゃそうよね。だって、私に世話される必要ない人たちばかりだったもの。
歴代の彼氏を思い出して、納得する。
自分の家につき、ドアノブに手を掛けながら、さっきのことを思い返す。
……それにしても、あのゆうとくんのお父さんて……。
なんか、今まで私のまわりに居なかったタイプだわ。
放っておけなくて、やることなすことにこっちが溜め息出ちゃいそうな……。けど、本人は一生懸命みたいだし、だからか憎めないのよね。
きっとそのせい。
こんなふうに、わざわざ人の家の世話なんて焼いちゃうのは。
――あ! そんなことより、8時までにこれ渡しに行かなきゃ。
あの彼を考えるのを強制終了させた私は、部屋に急いで上がって、アイロンを手にした。