恋愛ターミナル
アパートは同じだし、仕事でも近いなんて。
「ここでお仕事されてたんですか――……ゆうとくんの、」
「お待たせしましたー! ん? 平岡(ひらおか)、知り合いなのか?」
「や、まー……なんていうか」
「へー。彼女かぁ?! お前、今子持ちなのによくやるなぁ!」
「ちょっと、誤解されるような発言止めてくださいよ!」
……「彼女」って。ありえないでしょ。あんな可愛い子もいるのに。
大体、この人、奥さんも可愛いみたいだし。
「いいね! 若いやつは! あ、じゃあ平岡にあと頼む」
ぽいっとハンコを渡されたゆうとくんのお父さんは、去って行った人を見て、「参ったな」とぽつりと漏らしていた。
「あ、お名前。平岡さん、ていうんですね」
「え? ああ、そっか。名前言ってなかったんだ。うん、平岡昴(すばる)って言います」
「私は、仁科梓です」
「なんか、順序めちゃくちゃだな。いや、でも、ほんと。今朝は助かりました。ありがとう」
大きな口を開けて笑う平岡さんは、やっぱり髪もボサボサで、とっても汚い格好なのにとっても輝いて見えた。
「……青い作業服しか見たことなかったので。まさか、でした」
「あ。コレ、何種類か持ってるから。確かに『まさか』だよなぁ」
ゆうとくんがいないときに、こうして二人で話す感じがなんかヘン。
そんな不思議な感覚に囚われていると、コーン、と工場内にチャイムが鳴り響いた。