恋愛ターミナル
「梓って、いい“お母さん”になりそうだな」
片方の膝を立て、そこに頬づえをつくようにして私を見たまま突然彼が言う。
――なにを急に……。
私なんて、お母さんどころか、奥さんにだってなれそうもないのに。そんなふうに見えるわけないじゃない。
「急なアイロンもすぐかけれて、子供に喜ばれるたまごやきも作れてさ。一緒に入ってたハンバーグも、断然その辺で食べるもんより美味かったし」
大体、そんなこと言ったって、あなたはもう結婚して、ゆうとくん(こども)もいるじゃない。
「片付けとかもテキパキ出来て、いい嫁さんになりそう」
だから、あなたはそんなこと言ったって、可愛くて大事にしてる奥さん(ひと)がいるんでしょ?
「しかも美人だし。俺なら自慢しちゃうね! なーんつって。ははは」
期待させるような、無責任なこと言わないでよ。
私は平岡さんの言葉にもやもやとしながら、その場を立った。
びっくりした顔で私を見上げた平岡さんから目を逸らし、くるりと来た方向へと体を回した。
「――もうそろそろ戻らないと」
ひとこと言うと、平岡さんは携帯を見て、「もうこんな時間か」と納得して立ち上がった。
すたすたと先を歩く私に、なにも思うことなく、きっと後ろを歩いてるはず。
――私が、こんな想いをしているなんて考えもしないだろうけど……あれ?
ガードレールの手前で立ち止まって、よくよく考えてみる。