恋愛ターミナル
「はー」と、理由なき溜め息を吐いたあと、階段へと向かう。
すぐに自分の部屋に着いた私は、ゆっくりと鍵を回し、玄関へと入った。
バタン、と閉まる扉の音がやけに大きく聞こえる。
そのまま靴を脱がずに、ぼーっと立ったまま、同じ作りだった平岡さんの部屋を思い出す。
すると、駆けあがる足音が聞こえてきたと思ったら、すぐにインターホンの鳴る音が響いた。
ビクっと肩を上げて、後ろを振り返る。
咄嗟にドアノブに手を掛けて、誰かも確認しないで勢いよくドアを開けた。
――――だって、ひとりしか、思い当たる人がいない。
ゴンッ……と鈍い音と振動が手から伝わる。
「――いっ……てぇ」
「ごっごめんなさい!」
蹲るそのひとは、予想通りのグレーの人。
おでこを抑えてしゃがみこむ平岡さんが心配で、覗きこむようにして声を掛ける。
「だ、大丈夫ですか……」
「梓……不意打ちはねぇだろ」
「や、わざとじゃ……」
「わーってるって」
少し赤いおでこをした平岡さんが、下から私を仰ぎ見て、ニッと笑った。
その笑顔にほっとして、落ち着きを取り戻す。
私が手を差し出すと、その手にあの大きな手を乗せて、彼は立ち上がった。
すっぽりとかぶさるくらいにおっきな手……。
今日、その手に子供扱いながらも抱き上げられたことを思い出して赤面しそうなのを堪える。