恋愛ターミナル

お互いになにか言うわけでもない。
ただ、視線を絡ませて、自然と目を閉じた。


――刹那。

彼のあの大きな手が私の後頭部を優しく包んで、そっと触れるだけのキスをした。

唇が離れるのと一緒に、じょじょに瞼をあける。
そして、再び彼と目が合うと、少し驚いたような顔をして私に言った。


「……ごめん。でも、引っ叩かれるかと思った」
「……爪跡は残すかもしれないけど、引っ叩いたりはしないわ」


その答えに、平岡さんは、私の顔を両手で包みこんで上を向かせる。
そして顔を傾けて、また私にくちづけた。

啄ばむようなキス。それから、咬みつくようなキス。

背の高い平岡さんに、小柄な私はまるで襲われているよう。
唇を合わせ、彼の舌が私の舌を絡め取る。私はそれに応えるように、平岡さんの首の後ろに手を回した。

息継ぎで、ほんのちょっと休んだ彼の薄い唇を、今度は私から奪いに行く。

それも不意打ちだったのか、少し驚いたようすだったけど、すぐに獣と化した彼は、捻じ込むように私の口内を支配する。


――どのくらい、続けただろう。

こんなに夢中にキスをしたのは、きっと初めて。


平岡さんが、私の服の下に手を忍ばせて、私も彼の作業服のファスナーに指を触れさせたときだった。

そのファスナーの横にある胸ポケットから、規則的なバイブ音が聞こえてきた。

お互いのちょっと荒い呼吸だけが聞こえていた空間に、鳴りやまない電話の音は、私を冷静にさせるには十分だった。




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