恋愛ターミナル

「9年かぁ。すごいね。そろそろじゃないの?」


なかなかきっかけがないのかもしれないけど、この二人の相手はお互いしか考えられないでしょ。
きっと徹平のやつがそろそろ動くって。

私が言うと、凛々はなにか言いたいようで。でも口いっぱいのチーズ鱈が邪魔して話せないみたい。


その光景を呆れた目で見てると、2本目のビールで喉の奥に流し込んで、「ぷはっ」と息を吐いた。


「そうよ! そろそろなのよ! 年齢的にも付き合い的にも!! なのに、結婚の“け”の字もでないし! 徹平がもたもたしてるから、杉中さんにプロポーズ的なこと言われたし!」


いきなり立ち上がって、演説かのように盛り上がる凛々を、目を丸くして見上げた。
新しい登場人物に、首を傾げながら尋ねてみる。


「杉中さんて誰?」
「職場の取引先の営業の人!」


職場の取引先の――?


その凛々の言葉を聞いて、考えないようにしていたはずの彼を思い出す。
私の会社の取引先にいた、彼を。


彼にプロポーズされたら……もし、そうされたら、一体私はどんな答えを出すんだろう。

はっ。違う違う! 今は凛々の話だ。


思考を元に戻し、慌てて凛々を見て言う。


「で? なんて答えたの?」


すると意気揚々と立っていた凛々は、力なくストンと座って、ぼそぼそと口を動かす。


「……保留」
「へー。じゃあ、杉中さん“脈アリ”だ。いいじゃん、そんなに結婚したいなら、その杉中さんにしちゃえば」
「梓は、彼氏が彼氏だからこういう悩みないのかもしれないけど!」


凛々がムキになって声を荒げた。
でも、元はと言えば自分が悪い。凛々に感じ悪く言ってしまったから。


結婚結婚て、別にどうでもいい。

私は、自分の両親みたいに、不仲なのにもかかわらず、私(こども)のために我慢して生活するなんていやだから。
しかも、子供なんて、もっともっとつらい想いをしてるのに。

だったら、初めから一緒になんかならなきゃよかったのよ。
私なんて、産まなければよかったのよ。




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