恋愛ターミナル
今まで常に根底にあったその考えを思い返すと、「ふ」っと自嘲した。
「まーねぇ。私は結婚に興味ないし。だから、利害が一致するのよ。妻子持ちと」
そう。だから、世間で言う『不倫』という関係が私には最もラクなものだった。
相手のことを、好きと言えば好きだし。
結婚の意思がない私に、結婚を強要するような環境にいる相手でもないから。
それでいい、ってほんと、ついこの前まで思ってたのに。
あの人が、あんな人が、私の前に現れるから――――。
「冷たい、って思うかもしれないけど、私にしたらそうなのよ。そんなに結婚したいなら、結婚できる近道を選べばいいじゃない、って」
大人なはずなのに、まるで子供のように純粋な目で、こんな私に笑いかけるから。
裏表のない彼なら、今までの私の概念をぶち壊してくれそう……いや、もう壊されかけてたから。
だから、少しだけ。夢を見ちゃった。
初めて抱いた、決して叶うことのない夢を。
私は2本目の缶に手を伸ばした。
「私も、梓みたいに大人ならいいのに……」
そんなことないんだよ、凛々。
私、きっと本当に人を好きになって、付き合ったことってないんだ。
凛々の方がよっぽど、私よりいろいろ経験してきて、大人な女性だよ。
今の私なんて、人のものが欲しくて欲しくて仕方ない、タチの悪いコドモ。
そのまま居間で寝てしまった凛々にブランケットを掛けて、一人でそのあとビールを2缶空けて、眠りに就いた。
――お酒の効果か、階下からの音はなにも耳に届いては来なかった。