恋愛ターミナル


ピンポーン、と二回室内に鳴り響く。
化粧をちょうど終えた私は、その来客に心当たりがあって、玄関のドアを開けた。


「あら。意外に早いのね」


今は朝の7時過ぎ。
普通なら、休日にこんなに早い時間に訪問されても困るものだけど、今日は特別。

その客人を招き入れると、私はその人の後ろをついて行った。


「凛々」
「なっなんでっ! 梓が教えたの!?」


――やれやれ。この期に及んで、まだ素直にならないの?
凛々の望みの勝機はあるんだから、あとはそのまま素直になればいいのに。


ガバッと起きた、寝起きの凛々に溜め息交じりに口を開いた。


「あのねぇ……そんなことしなくたって」
「お見通しだ」


私の言葉に続けたのは、凛々の彼氏、徹平だ。


「じゃ、世話になったな、仁科」
「いーえ」
「ちょ、ちょっと!! 私、メイクもしてないし、荷物もっ」
「メイクなんて普段たいしてしてねぇだろ。荷物もこのカバンだろ? 昨日のまんまで寝やがって」
「あ、あずさ―――」


ぎゃあぎゃあと早朝から賑やかな、お騒がせカップル。二人が家から出て行くのを、静かに窓から見送った。


ああやって迎えに来てくれるんだから、凛々も愛されてるよ、ほんと。


くるりと窓に背を向け、一人きりになった部屋を見渡す。

当たり前だけど、私のとこになんか、迎えに来てくれたりしないもの。

力なく笑った声が静寂の中に消え入ろうとしたときに、ピンポー……ン、と一度だけインターホンが響いた。


――誰? あの二人は今出て行ったのを見届けたし……。


もう一度、そっとレースのカーテンを避けて外を窺う。でも、宅配便の車もなければ、自転車の一台もない。

不審に思いながらも、心のどこかで期待してしまう。


『もしかして』、と。




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