恋愛ターミナル
*

ピンポーン、と二回室内に鳴り響く。
化粧をちょうど終えた私は、その来客に心当たりがあって、玄関のドアを開けた。


「あら。意外に早いのね」


今は朝の7時過ぎ。
普通なら、休日にこんなに早い時間に訪問されても困るものだけど、今日は特別。

その客人を招き入れると、私はその人の後ろをついて行った。


「凛々」
「なっなんでっ! 梓が教えたの!?」


――やれやれ。この期に及んで、まだ素直にならないの?
凛々の望みの勝機はあるんだから、あとはそのまま素直になればいいのに。


ガバッと起きた、寝起きの凛々に溜め息交じりに口を開いた。


「あのねぇ……そんなことしなくたって」
「お見通しだ」


私の言葉に続けたのは、凛々の彼氏、徹平だ。


「じゃ、世話になったな、仁科」
「いーえ」
「ちょ、ちょっと!! 私、メイクもしてないし、荷物もっ」
「メイクなんて普段たいしてしてねぇだろ。荷物もこのカバンだろ? 昨日のまんまで寝やがって」
「あ、あずさ―――」


ぎゃあぎゃあと早朝から賑やかな、お騒がせカップル。二人が家から出て行くのを、静かに窓から見送った。


ああやって迎えに来てくれるんだから、凛々も愛されてるよ、ほんと。


くるりと窓に背を向け、一人きりになった部屋を見渡す。

当たり前だけど、私のとこになんか、迎えに来てくれたりしないもの。

力なく笑った声が静寂の中に消え入ろうとしたときに、ピンポー……ン、と一度だけインターホンが響いた。


――誰? あの二人は今出て行ったのを見届けたし……。


もう一度、そっとレースのカーテンを避けて外を窺う。でも、宅配便の車もなければ、自転車の一台もない。

不審に思いながらも、心のどこかで期待してしまう。


『もしかして』、と。




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