恋愛ターミナル


このお店かな?

あの日から二日後の月曜日。
私は仕事を終えてから、晃平さんがいるであろうお店を探していた。

結婚式のあの日。連絡先は交換したものの、酔っていた私にメールをする余力も残ってなくて。
翌日も、逆に冷静になったせいか、なんてメールをしていいか悩みに悩んで、結局本文欄が空白のまま時間は過ぎて行った。

もちろん、晃平さんからの連絡もない。

人が賑わってくる時間に、一人怪しい動きをする自分。
たくさんお店が立ち並ぶ中で、イタリアンと言えばここともう一店舗しかない。

木製の足のカフェ看板を見るフリをして、店内の様子を窺う。
このお店は、この間私が想像していた制服通りで、だからなのかなんとなく晃平さんはここにいるような気がしてならない。

ちらちらと盗み見をしてる間に、次々とお客さんが足を踏み入れ、ウエイトレスに案内されていく。

でも、そのおかげで店員さんが、私という存在に構う時間がないからラッキーだ。

キッチンにばかり視線を注ぐ。
幸いガラス張りのキッチンが、入口からまっすぐ付き合ったった場所にある。そこで忙しなく動くスタッフ3人の背中を私は観察していた。


あ。きっと、あの真ん中の男の人が、晃平さんだ。


コック帽からのぞくちょっと茶色がかった襟足。
天然パーマなのか、少しくるんとうねるクセのある髪と、たまに見える頬のラインがそうだと思った。


ここのお店で働いてるんだ……。


なぜか、晃平さんを見つけた達成感を感じたあと、ハッと我に返る。

こんなとこ、見つかったらどうしよう。

確かに土曜に、「今度、店おいでよ」と言ってくれたけど、100パーセント社交辞令だと思う。
それに、結局今の今まで連絡があるわけじゃないし、突然私が「探しちゃいました」とかって来ても、迷惑なだけかも。

っていうか、もしも「どうしたの?」とか言われたら、なんにも理由がない。
理由! 理由を考えなきゃ……。



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