恋愛ターミナル
斜め前の席に、カップルが新しく案内されてきた。
仲良さそうに、笑いあいながら向かい合って席に着く。
……同じくらいの歳かな? あ、指輪してる。結婚してるんだ。
楽しそうに談笑しているその夫婦は、私のことなんか気付きもしない。
それをいいことに、その二人を未来の自分と重ねて見ていた。
結婚しても、たまにはこういうオシャレなお店にああやって手をつないで食べに来たいな。
だけど、普段はやっぱりおうちでご飯にして。
料理はものすごく得意ではないけど、頑張って喜んでもらえるようなものを用意して、旦那さんの帰りを待ちたいな。
休みの日は、おうちで一緒にDVD見たりもいいけど、月に一回くらいは映画デートとかしたりして。
「お待たせ致しました」
「はいっ」
仲睦まじい若い夫婦が、視界から遮られて話掛けられて私は、思わず声が大きくなった。
背筋をぴんと伸ばした私を驚いた顔で見ながら、店員さんはテーブルにコトッとお皿を置いた。
「彩り野菜のパスタです」
「あ、はい……」
その珍しいものを見るような店員さんの視線が痛くて、身を縮めてか細い声で返事をする。
店員さんが伝票を置いて完全に去っていくのを確認してから、ようやく目の前の料理に対面した。
うわぁ。ほんとに彩りがきれい。
大きめの白いお皿の中心に、高さをつけて盛られたパスタ。光を受けてつやつやとしてて……ちょっとにんにくの香りが鼻に届く。
すごく、すっごく美味しそう!
「いただきます!」
近くのお客さんに聞かれないように、小さな声でこっそりと手を合わせて言うと、フォークに巻き付けた輝くパスタを頬ばった。
んー! やっぱり美味しいっ。想像以上! すぐ食べ終わっちゃいそう!
思わず笑みが零れながら、まるで今日初めての食事のような勢いで、そのパスタを平らげる。