恋愛ターミナル
小さめにカットされたタルトとチョコレートケーキ。キューブ型はティラミス。ベリー系が可愛く散らばって。あとはまわりにまるで絵を描いているかのような黄色と赤色のフルーツソース。
「うわ……これ、なに?」
思わず口から出てしまったものは、それらの上に細い銀の糸のように飾られてある飴細工。
すごい……。これ、ほんとに晃平さんが作ったの? 食べるのもったいない……。
プレートの“作品”に魅入られて、手をつけずにしばらくいると、スッと横に誰かが立っているのに気付いて顔をあげる。
「あれ? お腹いっぱいになっちゃった?」
苦笑して言ったのは、もちろん晃平さんで。
「あ、いえ! そうじゃなくて、なんか、食べるのがもったいない……」
首を横に振りながら言うと、晃平さんは目を大きくして私を見た。
え……なんかまずいこと、言ったかな……。
私も同じような目をして晃平さんを見ると、驚いた顔が一変して、くしゃりとした可愛い笑顔になった。
男の人に“可愛い笑顔”っていうのは嬉しくないかもしれないけど、でも、本当にそんな感じの笑顔だった。
「そっか。それはそれで嬉しいけど、でも遠慮なく食べてみて?」
「あ、はい。もちろんいただきます!」
晃平さんに見惚れそうになった視線を、色鮮やかなデザートに向けて気を取り直す。
フォークでチョコレートケーキの端をすくい、わくわくしながら頬ばった。