恋愛ターミナル
私の言葉に晃平さんはピタリと足を止めて、振り返る。
おぶわれてる私は、目は合わないのが救いで、思ってることをそのまま吐き出す。
「都合いいって思いますよね……? いまさら、晃平さんを好きになった、だなんて……」
消え入るような細い声で、精一杯の告白をした。
玉砕覚悟の告白が、こんな全身から汗が出そうなくらい緊張するものだなんて思ってなかった。
小さな声だったけど、こんな至近距離で言ったことだもん。聞こえてるはず。
だけど、なにも返事がない晃平さんに、どうしていいかわからなくて、肩から下げた手をぎゅっと握った。
「……ここ、オレんち」
「え? あ、職場から結構近いんですね……」
まるで私の言葉がなかったかのように、話が変えられてしまった。
聞こえてないわけないし、やっぱり迷惑だったんだろうな。
言わなければよかったのかな――。
一階は車庫の3階建てのアパート。
入口に入り、そっと私を地に下ろすと、オートロックを解錠した。
「あ……歩けますから」
また背を向け掛けた晃平さんに言うと、心配そうな顔をされたけどそのまま前を歩いて行った。
綺麗なアパート。築年数がまだ浅そう。
自分を冷静にさせるために、そんなどうでもいいことを考えながら晃平さんを追う。
「どうぞ?」
「……おじゃまします」
バタン、と閉まったドアの音に、『なんで私は、今晃平さんの家にいるんだろう』なんて思ってしまう。
だって、友達っていう友達でもない気がするし、さっきの晃平さんの態度から、これ以上なにか進展もない。
私ももう、言うことはないし、気まずいだけだ。
玄関に突っ立ったままの私を疑問に思った晃平さんが、戻ってきて私の顔を覗く。
「どうかした? 足、痛い?」
「――――私、帰ります」