アイノカタチ
あれから、社長の突拍子もない提案が出た事により、午後から社長を連れて行くはずだった予定を明日に回す作業に追われた。
もちろん、言いだしっぺの社長も一緒に。
なんで自分が、とぶつくさ文句を言っていたが、月希さんに睨まれ大人しくやっていた。
これじゃあどっちが偉いのかわかったもんじゃない(笑)
そんなこんなで私も引っ張り出され4人でてんやわんやと仕上げて漸く予約を入れた店へと雪崩込むように入った。
と、言うか。
やっぱり高級割烹亭なのねん。
2階に案内される私達。
「どうぞ、ごゆっくり」
着物をきた綺麗なお姉さんが、にっこり微笑みながら障子を空ける。
既に中は、食べるだけのセッティングになっていた。
それぞれ席に着くと、いつの間にきたのか、先程のお姉さんの他に3人が、ビール瓶をもって
こちらにやってくると、注いでいってくれた。
社長が片手を上げると、中居さん方はスタスタと部屋から居なくなってしまった。
「さて、今日は本当にめでたい事に、一つの、小さな企業だが、大きな宝と契約を結ぶ事が出来た。
しかも、ここにいる櫻崎の活躍あっての契約だ!少しばかりではあるが、我々から礼を込めて、祝おうじゃないか!」
高々と社長が宣言する。
「えっ!いや社長っ!そんな大きな声でそれはやめて下さい!」
私は何を言い出すかっ!との意味を込めて社長の腕にしがみついて抗議するも、口は止まらず更に大きな声で「拍手!」とまで言いはる始末。
私は自分の顔が熱くなっていくのを感じながら縮み込む。
「おやおや、そんなに小さくならなくてもいいんですよ?」
「そうです。櫻崎さんの働きが無ければこの契約自体オジャンだったんですから、称えられるのは当たり前のこと。堂々と胸を張って下さい」
月希さんと武惟さんが、お酒を片手に言うけど。
「恐れおおくて胸を張るなんて出来ません」
私はボソッと呟く。
帰りたい。帰っていいですか。
本当にこの場から逃げたい。
まさか、こんな所で高々と言われるとは、なんて恥ずかしい仕打ち。
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