飛ばない蝶は、花束の中に
とにかく、夏休みは帰らないし、ドイツにも帰らない、お兄ちゃんは居ても良いって言ってくれてるから、と。
少し声を落として話した。
部屋のドアでは、渡されたアザラシと洗濯物とを取り替えた“雅”が、きゅ、とそれを抱き締めて笑う。
お兄ちゃんは、どんな表情をしているのかは、見えない。
見えないけれど。
きっと。
きっと。
“雅”は。
もう一度私を見ると、小さく会釈して、姿を消した。
お兄ちゃんのベッドにあった、ぬいぐるみを抱えて。
「深雪、お前、金あるのか?」
「え?」
電話を切って、息をついた私に、急にそんなことを訊いたお兄ちゃんは、ウォレットチェーンの付いたままの財布を手に取った。