飛ばない蝶は、花束の中に
お兄ちゃんの、ベッドしか座るところのないような部屋で、お兄ちゃんを目で追いながら。
言わなきゃ伝わらない、ダメならダメでも、口に出さなきゃ伝わらない、と。
つい興奮して喧嘩腰で喋っていた私の声は、きっと大きかったと思う。
目で追っていたお兄ちゃんが、不意に自分の携帯を開き、顔を上げると、部屋のドアを開けた。
好きな事くらい、伝えたっていいじゃない!! と。
勢いそのままにママに叫んだ、そのタイミングで。
ドアの外で、畳んだ洗濯物をいくつか抱えた“雅”が、携帯片手に。
申し訳なさそうに立っていて。
私を、見た。
お兄ちゃんは、“雅”の髪を撫でると、さすがにちょっと恥ずかしい、と息をのんだ私を見ないまま、白いアザラシのぬいぐるみを、手に取った。