飛ばない蝶は、花束の中に
雅は“タカノ”の牙を抜く。
あっさりと矛を収めた“タカノ”は、今までだって別の部屋だったろうに、まるで今生の別れのような抱きしめ方を、した。
「…また、明日」
「はい。おやすみなさい」
“タカノ”を見送り、静かにドアを閉めて振り向いた雅は、小さな子供をあやしていたかのように、苦笑を浮かべていて。
イニシアチブを取っているのは、もしかしたら雅なのかも知れない、と思わせた。
「……“タカノ”って、いつもあんなに大袈裟なの?」
「ん~…そうですね…ここの人たちは、みんな大袈裟です」
凱司さんも宇田川さんも、大袈裟な、って呆れる友典さんですら、かなり、と。
雅は静かに、それでもとても嬉しそうに笑うと、“タカノ”の置いていった布団を、床に敷きだした。